PRノウハウ1
プレスリリースの基本
1.プレスリリースとは
プレスリリースとはテレビや新聞などのメディアに情報を届けるために、企業や団体などが作成し発信する資料のことです。メディアはこれを報道する際の基本資料とします。通常、A4用紙1枚~数枚程度に完結にまとめます。新聞や雑誌などの記者はプレスリリースの情報をそのまま記事に掲載することもありますので、記載する情報には間違いがないように注意する必要があります。
2.フロー情報とストック情報
報道の材料になる情報には、「フロー情報」と「ストック情報」の2種類があります。これは私の造語です。
ここでいう「フロー情報」とは、メディアがその日の報道に用いる情報で、その日(あるいはその週)を過ぎれば、見ずに流れるかのように報道する価値がなくなってしまう種類の情報のことです。これは、テレビや新聞で、通常のニュースや記事で紹介されます。この場合、プレスリリースは、記者や取材クルーが新商品発表会やイベントに来てもらえるよう、あるいは新商品発表日に記事掲載や放映がされるように配信します。
「ストック情報」とは、取材映像を放送したり、記事を掲載したりする日が決まっているわけではないが、記者が情報をストックしておき、新聞の特集記事やテレビの企画コーナーなどに向けて取材され掲載・放映される種類の情報です。このような情報のプレスリリースはいつ発信しても構いません。
3.プレスリリースを送るべきメディアの選択
プレスリリースを送る先は、多数あるメディアの中から、適切な送り先を選ぶ必要があります。ただ、企業がプレスリリースを送るべきメディアは、9割以上はある3つの分類のいずれかに分けられます。その3つの分類を以下に説明します。
プレスリリースをそれぞれのメディアに送る方法は、今でも、それぞれ該当する部署にFAXで送信することが主流です。郵送でもメールでも受け付けています。なお、一部のメディアはFAXを禁止してメールでのみ受け付けるところもあります。
メディア分類 |
該当するメディア |
扱う報道内容 |
①経済メディア |
・テレビの経済番組やニュース番組の経済情報(番組制作部宛または報道部) ・新聞の経済・産業面(経済部、産業部) ・雑誌のビジネス経済誌(編集部) など |
企業の新商品発表、新規事業や業績発表、社長交代などのフロー情報による報道や、市場環境変化などのストック情報による特集報道など。 |
②生活メディア |
・テレビの生活情報番組(番組制作部宛) ・新聞の生活情報面 ・生活情報誌 など |
衣・食・住や健康・医療・介護・教育など、家庭生活に関する情報です。特集記事や企画コーナーでストック情報が扱われるケースがほとんどです。 |
③社会メディア |
・テレビの報道番組(番組制作部宛または報道部) ・新聞の社会面(社会部) ・一般週刊誌(編集部) など |
政治、外交、事件、事故、災害、地域などに関する情報です。企業がメインに扱われる領域ではありませんが、企業の商品やイベントなどがこれらの話題に関するものである場合に、取り上げられることがあります。 |
4.プレスリリースを送るべきタイミング
厳密に言えば、発信するテーマや、とりあげてほしいメディアによって、発信すべきベストなタイミングがあることもあります。大部分のケースは、当日の1週間前後、遅くても前日までに発信するのが無難です。
新商品や新規事業の発表などで、株主や競合他社との関係上、発表直前までなるべく情報を秘密にしておきたい場合は、発表前日の夕方までに送るとよいでしょう。プレスリリースに「情報公開日を●月●日にお願いします」と記載して、番組や記事での報道を待ってもらう方法もあります。しかしながらこれはメディアスタッフと発信者との信頼関係で成り立っているものであり、常にメディアが報道を待つという保証はありませんので、注意が必要です。
一般的にプレスリリースを発信する場合は、その情報を扱いうる主要メディアに、同じタイミングで一斉に配信する場合が多いです。なお、ある情報をあるメディアで確実に放送または記事掲載してもらうために、特定の1つの新聞社などに絞って情報提供をする「リーク」という方法もあります。
5.情報価値が低いならプレスリリースは無理に発信しない方がよい
プレスリリースはメディアにとって放送や記事など報道の材料になりうるネタがあるときに発信します。逆に言えば、報道の材料になりそうもない、メディアにとって情報価値が低い情報しかない時には、無理して発信するべきではありません。もし、情報価値が低い情報のプレスリリース発信を繰り返すと、メディアに「情報価値が低い会社」という悪い印象を抱かれてしまうかもしれません。それは避けるようにしましょう。
ニュース価値が十分あるかどうかをどうやって判断すればよいでしょうか。ご自身でだいたいの目途をつける方法としては、同じようなテーマや文脈での放映や記事がなされているかどうかを確認することです。業種や商品が異なっても、文脈に共通性があれば参考になります。実際に放送や記事で取り上げられたテーマと比較しても遜色ないテーマの情報なら、取材され、放映や記事掲載がされるチャンスは十分にあります。
6.「1秒」で「使える」と思わせることが重要
テレビ局や新聞社には、全国の企業や団体から毎日数百枚のプレスリリースが送られてきます。制作スタッフや記者が毎日忙しい中で、プレスリリースを読む時間は限られています。そのため、大量に届いたプレスリリースを、1通について1~2秒で使えるかどうかを振り分け、使えないプレスリリースは処分して、使えると思ったプレスリリースを後にじっくり検討することになります。
つまり、プレスリリースをとりあげてもらうには、最初の1秒で「使える」と思わせることが重要になります。影響力が大きいのはタイトルであり、タイトルの良し悪しがプレスリリース成功の9割程度を占めるといってもよいでしょう。また、写真やグラフ、図解など、ビジュアルに訴えることも重要になります。具体的にプレスリリースをどのように書くかは、次で説明します。
7.客観的な情報を簡潔に表現する
プレスリリースは広告とは異なり、メディアの視点で、そのまま記事に使われても支障がない表現を用います。そのため、「~すべきだ」といった主観的な意見や、「おそらく~だろう」といった根拠のない推量情報、情緒的な表現、複雑な表現、婉曲な言い回し、余計な修飾語をプレスリリースに使うべきではありません。プレスリリースには、客観的な情報、根拠のある情報を使って、分かりやすく論理的な表現、簡潔な表現を用いるようにします。
8.事前に関係者に確認をする
プレスリリースを書いた後は、社内外の関係者に事前に確認しておく必要があります。社内の担当部署に確認しておかなければ、担当部署で最近変更された内容がプレスリリースに反映されないことも起こりかねません。また、知らないうちにプレスリリースを見たメディアの方が記事にして、それを見た顧客から問い合わせがあった時に、プレスリリースの内容を知らなければ適切な対応ができないこともあります。また、他社と協同で行う事業であれば、その会社に無断で勝手にメディアに情報を送るようなことは、その会社に対して失礼なことであり、信頼関係を傷つけることになります。そのため、プレスリリースを配信する前に関係者への確認が必要となります。
著者 門脇 純